ぐりゅー

ああ果てしなく、ぺんぺん草が生えてゐる。

耕作地にアブラナ科の植物が花を咲かせてゐる。なんとなく耕作放棄地みがある。

 ハハコグサ(Gnaphalium affine)の方言で、「チチコグサ」があり、標準和名での「チチコグサ」が、Gnaphalium japonicum に当てられてゐるといふナニがある。ぢゃあ何か―、オーストラリアの広大すぎる、ノモス(仕切り)の言訳として言語が挙げられるアボリジナルな皆さんの使ふ、なんちゃって標準語で「うさ耳で二本足のもふもふ」を指す語は「ワラビー」なのだが、白人が接触した、どっかのかなりきっつい訛りの処での特殊な用法である筈の「クングル」がアカデミスムに採用され、それを指す一般名詞が「カンガルー」で中くらゐのがワラビー、木登りとかで小さいのがワラルーと言はれるとかってのが秋津島にもあったんかー、おんどりゃあ。しかもホウベラといふ繁縷みのある呼称もあるんぢゃあ。うがぁ。

 さう言へばホタルイカが、ホタルイカモドキ科で、ニセホタルイカのゐる問題もあるんであった。(エゾトガリネズミがトウキョウトガリネズミになった問題はまた別)

 柳田國男『野草雑記』所収の『草の名と子供』にある『兎の耳』に、ハハコグサが取り上げられ、この植物が「鼠の耳になら似てゐると言へる」にも拘らず、鼠耳と呼称する文化圏である静岡県と被るところで「兎の耳」、奈良県北部では「猫の耳」と読んでゐるのを「疑問であるが」として紹介してゐる。
 この辺を、「播州人のツッコミ」として紹介した場合、読者が納得するかどうかが甚だ自信がない。

 呼称は一応ざっくり

ホーコ系(ホウコウクサ ホーコヨモギ ホウコ ホーコバナ ホーコーバナ ホーコサン)、

ゴギョー系(ゴギョーヨモギ ゴギョーブツ ゴギョー)

餅草系(オーモチクサ ネバリモチ モチクサ モチバナ モチヨモギ ヤマモチグサ)

ヨモギ系(オトーサンヨモギ トノサマヨモギ オトコヨモギ オトコモグサ オトノサンヨモギ等「多分偉い蓬」系とヒナサンヨモギ ヒナヨモギ等、「黄色い蓬」系にホーコーヨモギ モチヨモギ等)

ケモミミ系(ネズミノミミ ネコノミミ ウサギノミミ)

花とかを他のものへ見立てた(アワゴメ オトノサマノタバコ キツネノタバコ キバナグサ キンバナ コージバナ)

他テンヂクモチ(草餅の一種である天竺餅 の材料もかう言はれる)とかトーゴとかマワタソウ、ワタグサ ヒヨコグサ ヨメナ タマゴ タマゴグサなど

に分かれる。コウヂバナに関しては、「昔の麹は黄色かった」ので麹っぽい花を付けるからと言ふ柳田國男説へ他の先生方がツッコミを入れてない。のだが、柳田説では「ネバリブツ」といふ大分県つうか豊前国の宇佐地方での呼称について、「粘り(蓬餅よりはおもちうにょーんができるため)」か「真綿(葉っぱのもふもふをネバシと呼ばれる綿に見立てて)」のネバリにヨモギの異称である「フツ」であらうとするが、別の湯浅浩史説で、この草が撫で物 フェティッシュ 呪物の代りとして使はれたので異称「ウカシブツ」は「浮かし仏」であらうとするのが。ううっ。

 ネバリブツ関係についての柳田説は、ネバシが粘いの語系なので、いやぁ柳田先生は偉大だなぁな感じであるが、テンヂクモチに関し、「(脇祭りでいいです)降誕会の花御堂の屋根を葺く材料」と言ふのとの関連がどうたら言ってて―、あー、その葺く花の1、アザミは兎がよく食ふので「ウサギグサ」と言ふ異称があるさうである。

 なので、ハハコグサを、草餅に入れるのは薫り高く色もよいこれ即ちホウコでそ文化圏である播州びとは面白い衒ひをしますな的な、
「わが郷里ではホウコ これはよい香りがするから芳香であらうと 少年の頃は思って居た」
と説く柳田先生のアレがあるらしい。こっちは芳香でなくて這子、呪術に用ゐる縫い包みで岐阜名物さるぼぼみたいなものの代用品なのでホフコクサである可能性があるらしい。あー。なんかたるい。

 


呉智英『リアルのバカ』オーヴァーシュートだロックダウンだといふカタカナを使ふ小池百合子都知事安倍晋三首相について。アイデンティティは正体性の他に自信でもいいと思ふけども。

 小池先生が呉夫子の発案した「爆増」とか言ったら、皮肉な形で今年の流行語大賞狙へると思ひますが。


 ゆうきまさみ『新九郎、奔る!』鬼姫との弓矢での勝負に負けた新九郎さんは、いろいろから一応高評価を一応される。そして裏でなんかが。
 C.W.ニコル御大が亡くなった。個人的には長野の人なのにあったことはなく、あんまり意識もなく、宮崎駿御大と対談してまぁ納得は行くけども―なことを言ってゐたをっさん、であり、宮崎御大が、ニコル御大は、イングランド人に虐められる時にウェールズ人の誇りを胸に何とか耐えるとか、言ってたなぁとかしかない。一応。

 そんでもって、彼らの対談などで出てくる、『天空の城ラピュタ』のスラッグ渓谷は、C.W.ニコルとしては「おらほの田舎のみやましいとこ」ださうで、とか、ウェールズについて宮崎さんが「労組の運動をガチでやってるところ」とかの、まぁ肯定的に捉へてゐるのである。

 そんなわけで、イングランド人が見るウェールズ人は、化生物の怪魑魅魍魎妖怪変化の一類として捉へられた形跡があり、イングランドとか人でのヘイトしぐさにさう言ふのが認められるらしい。と言ふののエビデンスで、『オフ・オフ・マザーグース』(故和田誠訳)での、C.W.ニコル御大ののたまはくがあって、ちょっと嫌である。ここで、巨人とか(と言はれる)が鼻をハスハスしながら、

「イングリッシュマン臭い」(I smell the blood of an Englishman)

 といふナーサリー・ライムを、お仲間込み(脚韻を訳したものなので、臭ひをかぐオノマトペ「Fee fi fo fun」と「Englishman」を揃へるために、「in」系の「フィーファイフォーフィン/臭ってくるのはイギリス人」で訳すため、インクリング土人的にいやぁんなものになってをり、この辺のアレをナニするためにコーラスで土 ネイティヴを入れてゐるのである)で歌ってゐた上、それをやる際「ウェールズ人なのでイングランド人をやっつけるのは」何とか言ってゐたのである。あぁあああ。合掌。